NatureFarming > 映画『いのちの食べかた』座談会(2007.12.17)

映画『いのちの食べかた』座談会


 日々口にする食材(動植物)の壮絶な生産・加工過程を題材にした、オーストリア・ドイツ発の話題の映画『いのちの食べかた』を観た。そして話し合った!
 メンバーはそれぞれ食に関心を持つ、高校教師Nさん、20代女性猪狩さん、ホットニュース編集スタッフ針貝の3人。(2007.12.17)


 映画を観た感想から、食べ物への感謝、無駄にしてしまっていること、薬品漬けの食品やファストフード、コンビニ食の弊害など、現代の様々な食の問題にまで話は発展しました。これら現実を前にし、私たちはいったい何ができるのでしょうか? 

・感謝しなくちゃ!          ・でも夢をもつことは大切!
・食べ物を大事にしよう!     ・食は人の行いを左右する?
・薬漬けの食品だらけ?      ・結論??


感謝しなくちゃ!
猪狩:大量のヒヨコを化学実験室のようなところで孵化させていましたね。
教師N:薬漬けでしょうね。
猪狩:飼料にも入れてると思いますよ。薬品や栄養剤。
教師N:食牛も交尾させないで、元気な精子だけを選び人工受精させる。大農場の農薬散布の機械もすごいものでしたね。
針貝:ひまわり畑も飛行機で薬品を散布し、いっせいに枯らせる。
猪狩:きれいだったのに、次の瞬間には人為的に枯れさせた真っ黒なひまわりから種を機械で採取する。
針貝:パプリカも途方もなく広いハウス農場。でも、土ではなく、四角いロックウールで育ててましたね。
教師N:レールがついて自走式散布車で殺虫剤をまく。よく考えたねー。
猪狩:この映画を観たことで、課題が残されたなと私は感じました。今まで知らなかった衝撃的な生産・加工工程、今この現実の恩恵をおもいっきり受けていて、かといって、これがずっと続いていいかというと、そういうわけではなく、命の尊さをどこで感じたらいいかを、つきつけられたように思いました。
教師N:私も日ごろから、ファストフードの食材など、こんなにたくさんのものがどこから来るのか疑問に思っていました。この映画を通して現実を知って、結果的に目をそらしていたんだと分かりました。うれしかったのは、たくさんの若い人が観に来ていたこと、皆関心あるんだと思いました。この現状を知ったからには、食に対する感謝をしなくちゃいけない。
針貝:僕は逆に予想してた通りでしたね。壮絶な場面だったかもしれないけど、例えば、ケンタッキーフライドチキンの鳥肉の量を思うとき、そうだろうなと思った。そして作者がなぜ、労働者が無表情で食事を取ってる場面を盛り込んだかを考えたとき、これだけの機械、物質偏重の世界に心、情が入っていく必要があるのかなと思いました。ベルトコンベアで何万羽のヒヨコを流し、ワクチンを打つ、まったく物あつかい。そこに感謝は見えない。

食べ物を大事にしよう!
猪狩:無ワクチンの山本養鶏場では、食肉にされる鶏も、捕まえるときに逃げ回るみたいですけど、人間に食べられて初めて使命を全うすると思えば、間違っていることではないし、いたしかたない。でも、そういう命を食べている、そこには感謝が必要だなと私も思いました。それを思ってこの映画のヒヨコを観たときに、その命の全うの仕方が正しいのかどうかと思いました。
針貝:食肉になるという結果としてはいいのかもしれないけど、過程がね。例えば、牛が殺される場面があるけど、そこに祈りがあるのかどうか。
猪狩:山本養鶏場には供養の場があります。
針貝:牛も何千何億と瞬間的に殺されるけど、今の西洋にもそういう供養の考えがあるんですかね? 生きたまま腹を裂かれるから、洪水のように出血と体液が出る。結果的にそれのほうが食肉としてはおいしいんでしょうけどね。
教師N:先人が積み重ねてきた血抜きの方法から、色々失敗を重ねて考えてきたんでしょうね。どうやったらおいしくできるか。
針貝:じゃがいもの収穫の能率もすごい。朝から晩まで機械で延々と掘り続ける。
教師N:これがないとマックのポテトはないでしょうね。
猪狩:この現実を今なくすわけにはいかないけど、ここから何かが生まれればいいんじゃないかなと思います。スーパーに行ったときにパックの肉を見て、何かを思えばと。この間も、食事中に鶏をしめるときの話をしていて、そのとき、ちょうど鳥のから揚げを食べながら、その話と自分のから揚げがリンクしていないんです。食べ終わったときにあれっ?て気付いた。そのくらい感覚が麻痺しているんだと。
針貝:僕は映画を観た日の弁当が豚肉だったけど、合掌して感謝して食べた。
教師N:食べ物を頂くとき、心から感謝して、もっと大事にしていこうとか、捨てるのをやめようとなっていくと、生産現場も変わっていくと思うんですよね。これだけ大量に生産していれば、無駄というか、破棄しているものも相当多いと思うんです。何か病気が出れば、大量に処分される、そういう過酷な状況で育てられなくてもいいように変わっていけばいいと思うんですよね。

薬漬けの食品だらけ?
針貝:それと食材の薬品漬けという問題ですね。
猪狩:薬漬けだからあれだけの生産工程ができるんでしょうね。
針貝:そういうものが少しでも口に入らないようにしたいなと思いますね。
教師N:今トレイサビリティーという動きも出ていますしね。
針貝:ある生産者が、これからは自分たちで作物を生産していったほうがいいと、厳しいことを言っていましたけど。
教師N:自分が安全なものを食べたかったら、自分で作る。食品偽装も表われてきていますし。
針貝:私たちには何ができるんですかね。
教師N:まずは知ることだと思いますね。
針貝:知ったら、例えばファストフードには行かなくなりますかね。
猪狩:トレック自然農法を推進している人たちは、だいぶファストフードに行っていないですよ。
針貝:考えてみたら、僕もマクドナルドに行くのは半年に一回くらいですね。そして行ったあとに、こんな後味の悪いものを食べちゃった、と思うんです。前はおいしくてねー。一日おきくらいに朝マックに行って、会社に行くっていう感じでしたけど。
猪狩:トレック自然農法を推進している方々のお子さんたち、中高生と私は交流があるんですけど、その中には「ファストフードなんか行かない」という子もいる。変わったんだなーと思いました。教えてくれる場、本物を食べる場があって、変わっていく。
針貝:へー、そういう人たちをコツコツ増やしていくのがいいですね。
教師N:『スーパーサイズミー』観ました? 監督が三食マックを一ヵ月間食べ続けたドキュメント映画。途中でドクターストップがかかる。
針貝:あの映画はファストフードとともにアメリカの学校給食も批判しましたね。確かあの映画のあとに、アメリカの給食事情が少し変わりましたよね。(2006年5月、アメリカ小中学校での清涼飲料水販売停止措置)
教師N:マックのスーパーサイズもなくなった。
針貝:みんな給食におかしとかジュースを飲み食いしていたんですよ。でも日本の給食も大変ですよね。薬漬けですよね。野菜を消毒液で洗ったりね。O157の後はもっと大変でしたね。
針貝:食のため豚や牛を切りきざむ過程というのは、ある意味許されると思うんです。そこに祈りや感謝が入ってくれば。何が問題かっていうと、薬品漬けっていうことだと思うんです。これだけの豚が結局ここにあるということは、かなりの薬品と機械で統制している。枯葉剤ではないといっても、きれいなヒマワリが薬で一せいに枯れるわけですよね。収穫のために。
教師N:そう、大量消費、大量生産をなくして、もっと余裕を持っていくことがいいなと思う。今は祈る余裕さえないくらいだから、もう少し動植物をいたわるようになるといいなと思うんです。日本も大量の食物を捨てている。それが世界の貧困の場にいったら飢えで死ぬ人が減るというくらい捨ててるそうです。無駄ばかり。無駄のない消費にしていく必要があると思うんですよ。

でも夢をもつことは大切!
針貝:コンビニの廃棄の弁当を豚に食べさせて、豚がおかしくなったということもありましたね。確か出産ができないとか、産まれても奇形とか。動物と人間はサイクルが違うから、豚には薬品の影響が早く表われてくるという考えもある。
教師N:それを動物が身をもって知らせてくれてると思うんです。将来人間もこうなるよって。もうなってるとも聞きますけどね。
針貝:そう、豚はサイクルが短いからすぐ現れるけど、人間も将来もっと顕著に現れてくると思うんですよ。そうなってから、こんな薬漬けの食はダメだと分かると思うんですけど、僕らはその前に知らせていく必要があると思うんですね。
教師N:最初は耳を傾けてくれる人がいなくても、こうやって映画で告発してくれる人もいるし、あきらめないで、やっていく。
針貝:中高生がマックを身体で受け付けないって話、心強いですね。
猪狩:お母さんたちがすごくがんばって食事を作っているからじゃないですか。集まりのあと、お菓子を頂くとき、自然の食材で作ったものが出ると、みんな、わーおいしい、と本当に喜ぶんですよ。私が関わり始めた7年前より喜び方が違うんです。
針貝:壮絶な生産現場も現実なら、それも現実だね。そういう良い現実を増やして、引き継いでいくことが大切ですよね。
猪狩:一家庭でも残っていれば広がっていくと思うんです。そうやって育てられた子供たちが親になって子供たちを育てていく。
針貝:例えばケンタッキーに行く人が百人減れば百人分、千人減れば千人分のヒヨコが減る。要するに需要が減る。牛もそう。
教師N:そうすれば、もっとゆっくり生産ができる
針貝:もっと上手い肉なら肉が作れる。実際、まずいですからね。僕は牛丼屋でバイトしてましたけど、味付けが命ですから。うまい肉をつくるなら当然人為的に制御しないほうがいい。そういうものの需要が減る、そして供給が減る。逆にいい生産現場が増えていく。まだまだ難しいですけどね。
猪狩:でも夢をもつことは大切。

食は人の行いを左右する?
針貝:実は昨日、ノロウイルスで倒れていて、昨夜からほとんど食べてなくて、胃に入ったのが無施肥無農薬の野菜だけなんです。つらいときに身体が受け付けるのが本当の食べ物なんじゃないかなと素直に思いました。まだまだ大量消費の需要があるうちは、皆もそれが好きだから、仕方ない。先日も殺人犯罪(12月14日 佐世保乱射事件)があったけど、食も関係してないとは言えないと思うんですよね。
教師N:学校でも色々な問題があって、原因を話し合うとき、食だったんじゃないかと思うときもある。事情を聞くと、コンビニ食が多かったり…。今年は比較的穏やかな生徒が多いんですけど、昼食時のぞいてみると、みんなお弁当持ってきてますね。自分で作る子もいるし、親が作ってくれている子もいる。荒れてる子なんか、やっぱりコンビニで買ってきてるものを食べている。
猪狩:私の高校時代、友達のお弁当はいろどりが良くて、でも聞くと全部冷凍食品だったんです。
教師N:それも怖いねー。そう言われてみると私も冷凍食品も食べなくなりましたね。コンビニも。ほんとに見た目は質素な食になりましたね。まずは教えていただいて、そして積み重ねていくうちに、身体が欲しなくなった、有り難いですよね。
針貝:欲しなくなれば、その悪いものということが分かってきますしね。昔はおいしかったねー。
教師N:ねー、こんなにおいしいものが世の中にあったのかと思った。炭酸ジュースとポテト、絶妙なコンビネーションでしたね。
猪狩:そういえばハンバーガーだって昔はもっと高かったですよねー。その裏にはこういう生産工程が発達してきたのもあるんでしょうね。私バイトしてたんですけど、足りないくらいだったら、捨てるほうが利益が上がるんですよ。ハンバーガーが10分、廃棄の時間が決まっていて、いかに廃棄が少なくて発注できるかが発注者の腕にかかっていました。
針貝:ということは、10分で捨てるくらいな劣悪な素材で、味付けで誤魔化している、その裏には相当な薬品が入っているんでしょうね。劣悪なものを食べると、人間的にも劣悪になっていくんじゃないですかね。
教師N:作物だって自由に生きたいけど、この色、この形と規格が決まっていて、それに外れると廃棄の対象になる。どんなにおいしくても。自然に任せるということができない今、消費者の要求されるままに作られる。私の職場は、同僚のひとたちも、コンビニのものとか、カップラーメンとか大好きです。体に悪いと言っても聞かない。ある意味こちらが変人扱いされています。
針貝:今、義務教育の不登校が12万6千人と言われていますけど、高校生はどうですか。
教師N:いますね。そういう子は聞いてみると、小中と不登校だったりするんですね。心機一転高校で、と思うんですけど、やっぱりダメなんです。勉強ができたりするんですけどね。もうそうなると、こちらががんばっても、親ががんばっても、聞かない。でも、高校に行くというのは一つの選択肢で、いくらでも道はあると言うと気が楽になるみたいですね。大検とかフリースクールとか。やっぱり高卒の資格は取りたいみたいですね。学歴社会だから。どれだけ追いつめられちゃってるのかなと思うけどね。
針貝:社会もおかしいですよね。同じ方向に持っていこうとする社会、とは言っても、そこに乗かっていけない、というところにも、飛躍してるけど、食の問題もあるんじゃないかと思います。現実、どんなにつらくても、今の社会でやっていくしかないわけですからね。

結論??
教師N:まずは食に感謝して、無駄をなくしていくことから、少しずつ変わっていくかなと思いますし、それを知らせていくことだと思います。この映画のことを、いろんな人に話したんですけど、十人十色で、知りたくないわっていう人も何人かいたけど、希望をもっていきたいです。
猪狩:まず自分が変わって伝えていく、そしてみんなで知っている情報を共有して考えていきたい。
針貝:この座談会をする前は、ある意味仕方ないんじゃないかと思っていたけど、考えてみたら、自分自身がマックに半年も行っていないという、これからも行く機会はあるだろうけど、その事実と、トレック自然農法に取り組んでいる親御さん方のお子さんが変わってきているということを聞くと、そういう人が増えていくことが大切かなと。薬品まみれの食べ物を食べないような人たちが増えていくことが、こういうことの解決につながっていくんじゃないかと、ちょっと希望が持てた。
教師N:コンビニで売るものも、炎天下でも48時間持つおにぎりとかじゃないものが売られるようになったり。
猪狩:一日二日じゃ分からないけど、長い目で見て、必ず変わっていくといいですね。
教師N:こういうドキュメントはいくらでも作れるんじゃないかな。毎日身体を洗う洗剤はどう作られているかとか、ペットボトルの処分とか。職場でも毎日2本くらい飲んでいる人もいる。処理は追いついてないと聞きますしね。これから問題山済みっていうか、いろいろ正していかないといけないことがたくさんある。
針貝:まとまりませんでしたけど、また機会を作って話し合っていきましょう。ありがとうございました。


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